ぼくらの共時性 

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貝に行け
by そらしま みつたる

錬金術絵画法による「4匹のウサギ 06-01」

そらしま 2006年作

(偶然的手法を繰返し得られた、描かれた白ウサギの隣のシャドウとその上の大小の白ウサギ)

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そらしま 2006年作 

水面のぺルソナ破壊

. 下記の二つのイラストは単なる迷彩柄ではない。一切私は手を入れていない。この中

には「帽子をかぶった婦人像」(左)と「ヒゲの男」(右)が描かれている。

. 男の方は1983年イギリスのTVでの公開実験で使われたものである。何の実験かと言

うと「男の絵」の方が200万人に公開され知られた事によって、新たにこれを見た人々

にその描かれているものが「男の絵」だと分かりやすくなる効果があるか無いかの実験

である。そのためにまったく知られていない「婦人像」と比較された。

. 「他人が知っている事は、知らない人々にとってもそれが分かりやすい深層意識とな

る。」

という仮説を実験し、これをデータに取るためである。この絵のトリックの放送はイギ

リスBBCによりオンエアーされた。この仮説は発表したイギリスの植物生理学者ルパー

ト・シェルドレイ(Rupert Sheldrake)によりなされたので俗に「シェルドレイクの仮

説」と言う。正しくは「形成的因果作用の仮説」である。

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「帽子をかぶった婦人像」(左)と「ヒゲの男」(右)

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. この仮説によれば過去に知られた事実は簡単には消せない「形成の場」というものを

形成し、僕らの脳の受信機能がそれらを無意識的に受信しており、新たにそれらに出会

った時でもその情報を貸してくれ、簡単にその意味が理解されるというものである。

. これはオカルト的にはかなり古代より重視されてきた観念で「アカシックレコード」

といわれてきた。宇宙には別次元に巨大なレコード盤のようなハードディスクがあり、

過去のすべての記録資源が残されており、僕らはそこから過去の情報を知ることができ

るというものである。

. だが「シェルドレイクの仮説」ではそのメモリーの物理的実体が何なのかまでは話し

が進んでいないのだが。

. シェルドレイクは「過去生の記憶を持つ人々」もこの過去帳に記載されたデータとリ

ンクしている個性的な人々だと言っているらしい。

. また「輪廻」というものも「自我の生まれ変わり」という宗教的狂信と言うよりも「

過去とのデータの共振」とする理念として考え、この共振はその人の自我が、過去の何

者かのデータに似ている事によって誘発されるとする。つまりこれは、僕らはその時の

時点で、過去の一番心の格好が似ている人に「形成の場」をつかってリンクして人格を

形成して行き、その負の遺産も功徳もかつてのデータを引き継いでいくというものであ

る。

. シェルドレイクは生物の脳を記憶装置とは考えず、一種のTVのような受信機として

捉え、記憶とは「物理的脳の化学変化による変形」ではなく「形成の場」をつかった「

過去の自分との交信、適応」だと考えているらしいのだ。

. 輪廻好きなインド人界から出現した釈迦も、さすがにその社会では輪廻を否定しきれ

ずに「輪廻からの脱出」を最終目標にした。

. シェルドレイク流にいうとこれは「過去人との情報交換の遮断」を意味しており、あ

まり高度に覚醒してしまったので、過去人に共鳴する人材がいなくなってしまった、過

去に方向性のない事を意味しているかのようだ。

 そこまでいかなくて譲歩しまくりの僕ら凡人の人生が「過去の、ある自我という情報

のコピーからのスタート」という、ひょいっと横丁から現れたような事であるならば、

僕らが「過去人との通信にのめり込メルトモ」だろうと、「自我という霊が新たに

した新しい人体」だろうと同じ事である。

. なるほど僕らの使っている人間の脳をシュミレートしたパソコンをみれば、インター

ネットに繋げなけれはハードディスクに記憶されている情報は、質的にはお粗末で、重

いといえば要るでもない重視しようのないポルノのファイルぐらいで、その知性を外部

に依存している一種の末受信機でしかないのだ。

. 「シェルドレイクの仮説」とは生物の脳もそのような政府無き受信機に過ぎないとす

る世界観なのだ。

. 脳だけではない、ちょいと体を見渡せば、僕らの消化器から肺、手足に到るまで、台

所という消化補助装置や、植物の酸素製作、自動車や飛行機の超移動装置という外づけ

の外部機関に依存していて、僕らという風船は実は穴だらけの内部と外部が繋がった、

外へと溶け出してしまっている実体であるのだ。ふむ、これはもう放っとける訳がない

. この事はハードな肉体機械レベルだけの話しではない。脳というハートを司る機関が

扱う心理面でも、深いところでは外と内が繋がっているという仮説である。

. ユングは個人の無意識の深みに、人類共通の集合無意識があるとし、尚その奥に行く

と、心ともをしている身体ともいえない「類心的領域」を予感していて、そこは僕ら

と動物の共通の無意識領で、自然界と直接関係している、自然界と繋がってしまった

なのだそうだ。

. 心の奥底で外の自然とが一気に繋がっているパイプがあるのだ。そこでは最早、外も

内もな一致しているだろう。このような世界観を仏教では「如」としてきた。

. そのようなところで「シンクロニシィティー」は可憐に起きているのだろうか。

 この仮説を「共時性」の原因としてみる向きがある。キャロライン・コイツァー博士

は太古より「シンクロニシィティー」の「関係のない複数の出来事の意味のある関連

が度々起る事により、「シェルドレイクの仮説」によって「形成の場」が完成され、現

代ではより一層起りやすくなってきていると考えている。初めは単に偶然だったものが

白紙に書き込まれ、度重なる事により「シンクロニシィティー」化したというのである。

. かつて世界は日本人からくり師の飛行機の発明とライト兄弟のそれとは、ほとんど同

時であった事を後になって知った。このような事は度々古代から世界で同時多発的に起

きている。

. 又、生物に限らず物質の世界においても、それまでは結晶化しないと思われていた

リセ自体が、偶然原因不明で世界同時多発的に結晶化し始めたという有名な事例も

あるのだ。

. 今では毎年千を超える鳴りもの入りで作られる新しい合成物質も、初めは結晶化しに

くいが、いったんある形に結晶化すると、あとは容易用意ドンで同じ形の結晶が世界

各地で得られる事が知られている。

. この事の科学的説明は「おそらく科学者のヒゲにでも着いた分子が世界旅行で広まっ

たのだろう。」というオチにもならないものだが、僕はそれではお笑いにもならないの

で、ヒゲで始まりヒゲで終るというオチにしてみた。

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そらしま 2006年作

亀06-01

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このページの音楽仕様 (Sound design)
三味線+生録音  by Sorasima Mitsutaru